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もとのトラスロッドを計ってみると約9.12mm、いっぽう溝の深さは約10.33mm、約1.2mmの違い・隙間がある事になります。

以前に他工房で行った補修痕も確認できます。エポキシ系樹脂を充填したと思われます。おそらく一時はこれでガタつきが収まったのでしょうがまた再発してしまったのですね。私も同じような方法をとっていたと思います。

あまり多くの樹脂を充填すると左の画像のように2枚のロッドが接着されてしまう可能性があるのでほどほどにしておく事が大切かもしれません。

 


 

ではもとの溝を埋めるためにトリマーで、もとの溝幅より若干広い「刃」を使って綺麗にさらいます。


綺麗に溝がさらえました。この溝に合わせてメイプル材で埋木を作ります。

この図のように新しく埋めるロッドの大きさ(幅・深さともに)があきらかにもとのロッド溝より大きい場合、この埋め作業は行わずに済みます。

メイプルの埋木を接着している最中です・・・。はみ出た埋木はカンナを使い綺麗におとします。

さて、一気に新しい溝まで掘ってありますが、新しい溝を掘る前に指板との接着面をきれいに平らにします。少しでも反っていたり、平面がでていなかったりすると指板を接着した際、両端に隙間ができたりまたは真ん中が十分に密着されない事になるので気をつけます。また、溝の深さはロッドとピッタリ同じにしましょう。余分な空間があるとうまく反ってくれなかったり、遊びも増えるのでよろしくありません。(埋め込む時はトラスロッド全体にロウを塗ります)

画像を見てお気づきの方がいるかもしれませんが鉛筆で線が書いてあります。これはカンナがけやペーパーで平面を出す際、目安として書いてあります。作業中にこの線が消えなければ余計な部分を削っていない証拠ですし、ペーパーがけの時はこの線が消えていない部分が凹んでいる箇所として分かります。もちろん直線定規を使って「完全な平面」が出ているか確認します。

 

*オールドなど状態があまり良くない場合、大幅に削らないと平面が出ない場合は必要最低限まで削り残った凸凹は木工パテ・木片などを使って対処します。「パテ」や「瞬間接着剤」「エポキシ」と聞くと拒絶反応をしめす方もいますが、以前より申し上げているとおり躊躇せず状況に応じて積極的に使用・使い分けする事が大切です。

*このタイプをネックに仕込む場合は下図のような方法もあります。

 


 

指板の裏側もきれいに平面出しします。
この木の"ぽっち"ダボは指板を接着、クランプがけする際に位置がずれないようにするためのものです。はじめからこれが付いている物もあれば無い物もあります。このギターには付いていなかったのでこのように適度な場所を決めドリルで穴をあけ、ネック側には丸棒を挿入・軽く接着します。1ヶ所だけではズレるので通常2ヶ所つけますが幸いロックナット穴があいているのでその穴をガイドがわりにします。


さてすでに完成画像ですが弦を張りチェックしたところ各ポジションでビビリ音のバラつきはあったものの弾くに耐えないほどの不具合は見あたらずなかなか良い状態でした(指板面・フレットの話)。


今回は予算の都合上、仕上げの塗装は行いませんでした。画像を見るとお分かりのように接着した部分は微妙な段差ができます。これはいくら必要最低限とはいえ接着剤の残りカスやペーパーがけなどでコンマ何ミリか厚みや状態が変化するからです。
通常は接着後にこの段差をペーパーで綺麗に無くし塗装をして仕上げます。

 


*現在ではトラスロッド交換などのため指板剥がしを行った際は必ずフレット交換(指板修正&ナット交換含む)を行います。このケースではお客様の強い要望により、完成後どのような不具合(ビビリや音が出ないなど)があっても費用を抑えたいという理由から、フレット交換無しで完成としました。


 

だんだんと季節も暖かくなり桜が満開の今日この頃。こうなってくると頭の中も満開になり仕事など置いて花見でも行きたくなる今日この頃でもあった・・・。

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