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リッケンバッカー、ヴァレイアーツともにストレートタイプ(両効きロッドやアコギ用ロッドなど)のトラスロッド交換をご紹介しましたが、本来いちばんポピュラーなトラスロッドはストラト系などで採用されている湾曲させて埋め込むロッドです。(下図A)

そこで、通常の湾曲トラスロッドとして2ページ追加しました。このES345もかなり前に行った修理で写真も少ないですが多少参考になればと思います。前ページ1&2ヴァレイアーツ・リッケンバッカーの修理と合わせてご覧下さい。


 

状態はトラスロッドの頭、ナット部分がロッド(棒)ごともげてしまったケースでした。

ラバーヒーターを使い指板を剥がします。指板を剥がす前にフレットは抜きます。

ストレートのトラスロッドと違い指板を剥がしただけではロッド君は出てきません。先ほどの図Aのとおり埋まっているので小さいノミなどを使ってほじくり出していきます。

この「ほじくり出し」わりと根気がいる作業で必要以上に幅を広げてしまわないようけっこう気をつかいます。ロッドを取り外せたら接着面はある程度キレイにペーパーがけしておきましょう。

さて、お次はロッドを取り外したあとの「ロッド溝」をキレイにさらいます(ヴァレイアーツと同じです)。ここで問題なのはヴァレイアーツ&リッケンはストレートでしたが、今回は湾曲しています。この湾曲どおりに溝をさらっていかないとなりません・・・・。
そこで使用する工夫・治具は下図のとおり。

基本的にはヴァレイアーツと同じものを使ってます。両端に必要な寸法(その時々により)木材を取付けてしならせる事により湾曲した溝に合うようにしています。裏返して使用すれば平坦にもなるので一度作ってしまえば二通り使えて便利です。

次の作業に入る前に準備段階です・・・・指板を剥がしたりするとネックは反ります・変化します。これは製作段階のネックですが、このようにネック裏側から支える工夫をし、ヘッド部・ボディ部をしっかりと固定し、同時に定規を使って直線が出るようにします。クランプなどで固定しにくい楽器などはきつめのゴムバンドのような物でもかまいません。

トリマーで溝を掘る時にしっかりと直線が出ている状態で行うことが大切になります。これをいい加減におこなったり「多少順反り・逆反りしてるけど、ま、いっか」などで行うと最後に痛い目にあいます・・・・

 


 

<第一段階>
*ロッド溝を必要最低限の範囲で溝より若干幅広の刃でさらい、底面・側面を綺麗にした後、いちど溝を完全に埋めます。

作業の進め方ですが、まずはじめにロッドを取り外したら「調整部:A」「中央部:B(最深部)」「エンド部:C」の深さをノギスで測ります。中央部Bはノギスで測っていちばん深いところです。ネック材に直接エンピツなどでABC位置を記しておきます。
この「中央位置」もメーカーによって違います。A・B・Cの寸法など微妙なさじ加減によっても調整しやすいネック、しにくいネック、ロッドが効く場所などに大きくかかわってきます。


*治具の材料:メイプル材、厚み6.0~7.0mm、

ABCの各寸法が測れたら単純な引き算で「T」と「E」の寸法が出ます・・・・例えば、A/8.5mm、B/13.0mm、C/8.0mmとします。
B/13.0mm ー A/8.5mm = 4.5mm(Tの寸法)
B/13.0mm ー C/8.0mm = 5.0mm(Eの寸法)
です。
*この時にネック材の厚みから13.0mmを引き算して最深部で、あとどのくらいネック材の厚みがあるのか把握しておきましょう。

計算により出た寸法どおりにTとEを製作します。あとは治具をあてがいABC各位置を記し、B/中央部にはネジ止め用の穴をあけ、A&C位置にはTとEをそれぞれ両面テープなどで貼り付けます。
ここまできたら治具をネジ止め(B/中央部)、T&Eは両面テープでネック材と固定する程度で十分です。ネジ止めする必要はありません。

いよいよ掘りです・・・・・トリマーをB/中央部にセットし、刃・ビット(溝幅より幅広の刃)をネック材に当たるまで降ろし、そこから正確に13.0mm掘れるようにセット、あとは少しずつ掘り進んでいけば治具のしなり・湾曲どおりにさらえるという具合です。ロッド溝を綺麗にさらうのが目的ですから全面が綺麗にさらえたらそこでストップです。

ここで気づいた方がいらっしゃるかと思いますが、溝の湾曲の仕方がアバウトだったり、変だと、B/中央部はすでに綺麗に削れているのに他の部分はまだ刃が届かなく削れていない事などがあります。そこで無制限に刃を降ろして掘り進んではいけません!必ず「あとどの位掘ると貫通してしまうのか」を頭の中で考えながら掘らないといけません。
もし、プラス1.0~1.5mm掘り進めてもまだ削れていない部分があれば、いったん治具を外して「TとEの厚み」を1.0~1.5mm薄くしてもう一度セットし掘りましょう。

下の図は大まかなネックの標準的な寸法です。通常、最深部で約3.0mm(~2.0mm)以上は厚みを残します。


*余談・・・・上図の事から「ネックの握りシェイプ、とくにネックの厚みを変えてほしい」という依頼がよくありますが、このような一般的なトラスロッドが入っている場合は「厚み」を薄くする事は不可能です(よって厚み以外、Uシェイプを三角シェイプになどは可能)。もしネックの厚みを薄く削っていくと・・・・トラスロッドが露出してしまうからです。露出までいかなくてもココの厚みが1.0mmなどになると強度の面からもよろしくありません。
以前に、リシェイプされたネックでよく見るとトラスロッドがうっすらと透けて見えるほどのネックを見た事があります。。。。。作業したリペアマンはさぞかし心臓バクバク状態でしたでしょうね(まあ、その時点でアウト・失敗作業ですが^^;)

 

さて、目的の寸法・深さまで掘れたら安心してすぐに治具を外してはいけません。治具を外す前に埋木(事前にある程度の寸法まで製作しておきます)をあてがい、「しなり・湾曲具合」を罫書いておきます(下画像)。どちらがA側、C側か、とくにB/中央部の位置はしっかりと記しておきます。

まあこれは治具を外してしまってからでも可能ですが・・・・。
上画像はメイプルですが、ネック材に合わせた材を使います。このES345の場合はマホガニーなのでマホガニー材で埋めます(下)。


クランプの数は面倒がらず写真程度の間隔で十分に使いましょう・・・。ネック裏にはこんな形をした便利なコルク付当て木を使ってます。もっと長いやつがあったんだが・・・今は販売してるのか・・・?
一晩おいたら出っ張っている部分をカンナで削り第一段階は終了です。

第二段階は次のページで・・・・

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