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*追記 2015.7月
コリングスのアコギをマーチンD45と全く同じように装飾しました。修理・改造行程はコチラをご覧ください。

インレイのお問い合わせでよくあるのが「アコギの外周に貝を入れられないか?(マーチンD35やD45のように)」という質問です。以前から年に何度か同じご質問をいただくのでその都度「可能ですが非常に現実的では無いお値段になってしまう・・・」とご説明してきました。

という事で「なぜ?金額的に高額にならざるをえないのか」という事に関して詳しくご説明したいと思います。
多くの方がわりと簡単に貝を入れられるのではないか?と思いのようですが、作業的にはかなりの手間がかかりまたデメリット等もあります。まずは下記動画をご覧ください。

 

以下ステュMacのサイトへ飛びます。上記動画で使われている治具を売っています。
http://www.stewmac.com/shop/Bindings,_trim/Jigs/TrueChannel_Binding_Routing_Jig.html?tab=Video

 

本来、バインディング(外周に貝を施す事も同じ)を施すべく「段差」をつける・加工するにはこのような治具・ルーターを使います。まだ塗装もしていなく、ネックもジョイントされていません。製作するギターにどのような装飾(バインディング)を施すか事前に決定し、貝やバインディングの厚みを計算しその厚み分をこのような方法でいっきに削ります。

イメージ図

 


*追記 2015.7月
コリングスのアコギをマーチンD45と全く同じように装飾しました。修理・改造行程はコチラをご覧ください。

さて、バインディングを施す工程が大まかにお分かりいただけたと思います。それではすでに完成されているアコギに対して貝(外周に)を施す場合にはどうするかと言うと、通常のインレイと同じ方法、ミニルーターにより「施す貝の幅分」だけ外周を掘り、そこに貝を埋めていきます。が、この方法では「技術的に可能ではあるが、若干の隙間、見た目に難あり」となります。下図参照

イメージ図

 

指板面等へのインレイは一見すると貝の寸法ピッタリに彫れて埋まっているように見えますが、実際は貝に対してある程度の隙間があります。そこで(色合わせした)エポキシなどで埋める事により隙間を目立たなくしています。
手作業で掘っていくためどんなに慎重に作業を行ってもどうしても若干の隙間というものができてしまいます。上のイメージ図のように隙間(赤色部分)ができますが、スプルース材という色合いはかなり白っぽい色です。樹脂で埋めた「痕」が分かりにくいのは黒ければ黒いほど、暗い色合いであればあるほど目立ちません。

以上の事由から「すでに完成されたアコギの外周に貝のインレイを・・・」の場合、仕上がりの完成度に関してはもとから施してあった貝装飾(D-45のような)に比べると「若干の隙間」その隙間を「埋めた痕」がよく見ると分かってしまう、というふうにならざるをえません。

 

 

<その他の注意点>
ネックジョイント、指板に近い部分はミニルーターを使えません。よって手作業で「掘り」を行わなければならず他の箇所にくらべ荒くなる可能性あり。
貝を埋めた後に粗いペーパーで「貝の出っぱり」を削っていきトップ板面と面一にします(貝は0.2~0.3mmほど出っ張らせて埋めます)この段階でトップ面の塗装が一部剥がれます(外周から内側へ3~7mmほど)。
http://www.zinguitars.com/INLAY_item/Wolf/Wolf002.html  ←詳しくはコチラをご参照下さい
ナチュラルという色は厳密には「薄い黄色やアンバー」を塗ってあります。またトップ板の日焼けや経年変化によって木自体の色合い
も変化しています。よって部分塗装で色合わせはほぼ不可能で、新・旧の「塗装の境目」がハッキリと分かってしまいます。

そのため綺麗な見た目にするにはトップ全面の塗装をいったんすべて剥がし再塗装しなければなりません。アコギの場合、塗装が完成した後に、最後にブリッジを接着するので(塗装時にはブリッジが邪魔になるのでいったん剥がす必要があります)ブリッジ剥がし・再接着も必要。ピックガードも剥がします(もとのピックガードはいったん剥がすと反るので再利用不可の事が多い)。ブリッジの剥がし&再接着の工程において若干ブリッジ厚が薄くなるので場合によってはサドルも作り直します。
*弦高が低くなるのでその分をサドル下にシムを敷くなどで対処してよろしければ新サドル製作は必要なし。
*MARTIN等の場合ネックをジョイントする前にボディ&ネックを個別で塗装しジョイントします。そのため指板の脇・際(キワ)などは
見る人が見れば再塗装した痕跡が分かります。

 


 

ここまでややこしい文面を読んでいただいてありがとうございます。ここまで読んでいただきなんとなくお分かりいただけたかと思いですが、アコギの「トップ面の外周に貝を埋める」。目的は単なるコレだけですが、それ以外の作業でかなりの手間がかかってしまいます。

ザッと考えて・・・・(あくまでトップ面だけの装飾です。D45のように側面やバック面は行わない)
トップ面の塗装剥がし&再塗装で約¥46000~47000
ブリッジ剥がし・再接着で約¥38000~45000
ピックガード関係¥7500~15000
本来の目的であるトップ面の外周に貝のインレイ代で数万円・・・・・

技術的に十分可能ではありますが「非常に現実的ではないお見積もり」にならざるをえません。

いままでに、完成されたアコギに後から貝を施した形跡がみられるものを実際に見た事が何度かあります。
物によっては貝を施した後の塗装で「部分塗装」だけで済ましてある物も見かけた事があります。が、新しく塗った部分は表面がコッテリ・テカテカしており(これは技術を持った人でもある程度仕方ありません)もとの塗装部分は「塗装が引けて」木目が浮き出ています。(トップ板割れ補修などで部分塗装した場合にもこれが当てはまります)

新・旧塗装の境目も光に照らすとうっすらと分かり、ちょうどサンバースト↑↑をしたような感じで外周から2~3cmが「塗装を吹きました」という感じになります(上の画像はあえて分かりやすく外周を白っぽくしていますが、ちょうどこの範囲に新しい塗装が乗る事になります)。また何より、絶対に木地まで剥がさずに貝の出っぱりを削る(面一にする)事は至難の技なので(ポリ塗装など比較的クリアコート・上層が厚い場合は可能。MARTINの場合はラッカーで薄くほぼ不可能)どうしても一部剥がれた所はタッチアップで色合わせしてありましたが、前述したようにその部分はハッキリと分かってしまいます。

 


 

では最後に、それでは本来の施工方法どおりにやったらどうなるのか?勿論、そのようにすれば全く問題なく綺麗に仕上がります。

1:まずはネックとボディを外す(ネックリセット)
2:もとのバインディングを剥がす・取り外す
3:ルーターを使いVideoでご覧いただいたような形で新たな段差を掘ります。その際にルーターには「ローラーガイド」なるものを取り付けます。そのローラーが側板に沿って・当たりながら削る事で均一な深さ・幅で掘る事が可能です。したがって側面部分の塗装が若干ダメージを受けます。
4:段差ができたら、貝の接着&新バインディングの接着。
5:ブリッジとピックガードを剥がす(これはどの段階でも可能)
6:施した「貝・バインディング材」がトップやサイド板と面一になるように削ります
7:トップ&サイド面の塗装を全て剥がし→再塗装
8:ネックとボディをジョイント
9:ブリッジを接着。ピックガードも両面テープで貼り付け
10:必要ならサドル下にシム敷き、もしくは新サドル製作・取付
弦張り・・・ここまでしてようやく完成・・・・

どうでしょう?

どうせここまでやるならトップ面の外周のみじゃなく、D45みたいに「トップ面」「サイド面の上下」「バック面」と合計4ヶ所とも貝を入れたいですよね。そう、まんまD45仕様に。

できます!可能です!やります!

ただし上記のようにとんでもなく手間がかかる作業なのです。縁取り用の貝を1個ずつ入れていくという作業もこれまた大変な作業です。完成品のギターを完成前2/3くらいまで戻さないと出来ない作業なんですね。あえて上記作業を行うとすると数十万のお見積となります。

*追記 2015.7月
コリングスのアコギをマーチンD45と全く同じように装飾しました。修理・改造行程はコチラをご覧ください。

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