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*このページはGRETSCHの修理記事から抜粋。

*塗装の工程や使う番手などは職人さんによって様々です。あくまで私の経験からの方法をご紹介します。

 

塗装工程

基本の手順を紹介します。
*塗装剥がし〜木地調整まで済んでいる事が前提です

1:
Uコートシーラー(ヤニ止め)を1回吹く。ケバが出るので(木材の繊維がケバ立つ)翌日、かるく撫でるくらいにペーパーがけする。木の表面に塗膜の基盤を作り、次の塗料が木材へ浸透するのを防ぐ役割。また塗料同士の密着を良くする役割もある。

2:
サンディングシーラー
(中塗り、または下地層)を吹いていく。1日/4〜5回までを限度とし、3〜40分ごとに1回吹く。日が変わるごとに(その日の吹きつけをする前に)塗装表面の凸凹が無くなるまで#360でサンディングする。これを繰り返し、凸凹が完全に無くなると同時に全ての木地面がサンディングシーラー塗料で覆われた段階で完了。次の工程「着色」をするための基盤作りです。
*ポリの場合、その日の最初の1回目は吹きつけ量をかなり絞り、塗料を"まぶす"程度にしぶかせ気味に吹き、約15分後、通常の吹きつけ量にて行う。

3:
着色。
染料、顔料などあるが、染料の場合、トップコート塗料に対して染料を混ぜる。
色吹きが完了したら基本、トップコートを吹き終えるまでペーパーがけなどはしませんが、これもまたケースバイケースで凹凸を無くすため水研ぎペーパー(#800~#1000)でペーパーがけする事もある。

4:
トップコート
を吹いていく。1日/4〜5回までを限度とし、3〜40分ごとに1回吹く。吹き重ねる回数はケースバイケースだが基本的に塗装は薄く仕上げられればそれにこした事はないので、必要最低限の回数吹く。
参考までに、ポリなら7〜10回。ラッカーなら12〜16回くらい。勿論、これより少ない回数で仕上げる事もあります。
*ポリの場合、その日の最初の1回目は吹きつけ量をかなり絞り、塗料を"まぶす"程度にしぶかせ気味に吹き、約15分後、通常の吹きつけ量にて行う。

5:
乾燥。
ポリなら8〜10日(余裕をもってこの日数を)(塗料の資料からだと最短3〜4日で可だが、急がば回れ)。ラッカーなら約2週間以上は確実に乾燥させましょう。

6:
水研ぎ。
#1200→#1500の水研ぎ用サンドペーパーで塗装表面の凸凹が全て無くなるようにサンディングしていきます。#1200で完全に表面がツヤ消し状態になるまでペーパーがけし、次に#1500をかけ、仕上げる。

7:
バフィング。
バフィングマシーンでツヤを出す工程。コンパウンドを使用して、バフマシーンに均一の力で塗装面を押しつけてツヤを出します。カッタウェイなどバフが入らない所はあとで手作業でツヤ出し。

 

上記の工程を経て塗装した場合のイメージ図
  

おおまかな段取りはこうだが、例えばマホガニーやアッシュなどは(一度も塗装していない楽器の場合。つまり製作・製造段階)シーラーを吹く前にウッドフィーラー(目止め)(砥の粉)を導管に刷り込む必要があったりする。導管が太いため目止めをしないといつまで経っても塗装表面にブツブツと木目が残る(埋まらない)ためだ。
木地着色の場合、木地着色後にシーラーを吹き、サンディングシーラーを数回吹いてからペーパーがけしないと色が剥げるので注意、とか、いろいろあり、職人さんによって回数、工程、塗料の混合比など違います。

また全てに共通する事だが、雨の日や体感でいかにもジトッとまとわりつくような湿気が多い日は、塗装は避けましょう。こういう湿気が多い日は吹いたあと塗装面に「白く曇り」が出てしまいます。このような曇りを(ある程度)低減さすためノンブラッシングスーパーなるものもあるが・・・湿度が高い日はやめておいたほうが無難。

 

 

以下に当方で使用している塗料を紹介していきます。浜二ペイント(株)というところの塗料だが、業界では有名。たまに他工房へお邪魔したりすると「あ、ハマニのこれ使ってるの?」なんて話しになります。あと専門学校時代、ESPでこれを使っていたという事もある。

ポリ塗料に使うためのシンナー(希釈剤)

ウッドシーラー塗料(ポリ)

A液&B液は1対1の割合で混合し、全量に対して約10〜20%のシンナーで希釈する。

*ヤニ止めとも言われるこのシーラー塗料は、オールラッカーで塗装する場合でもこれです。

*薄めたトップコート(ラッカーのクリア塗料)をシーラー代わりに塗布するという話しも聞いた事はありますが・・・

サンディングシーラー塗料(ポリ)

A液&B液は1対1の割合で混合し、AとBの合計量に対して約20〜30%のシンナーで希釈する。

例:A/30ml・B/30ml=計60ml
シンナー/12ml〜18ml
総量は72〜78mlになる

トップコート塗料(クリアコート塗料)(ポリ)

A液2:B液1の割合で混合。AとBの合計量に対して約20〜30%のシンナーで希釈する。

例:A/60ml・B/30ml=計90ml
シンナー/18ml〜27ml
総量は108〜117mlになる

ツヤ消し(サテン/マット)トップコート塗料(ポリ)

A液2:B液1:シンナー1 の割合で混合。
A液2:B液1:シンナー2 まで可

例:A/30ml・B/15ml・シンナー15ml = 計60ml

ラッカー系塗料に使うシンナー(希釈剤)

ポリ・ラッカー、どちらにでも使用可能な曇り止め剤

シンナーも含めた全量に対して5%〜10%ほどの割合を混合
梅雨時など湿気が多い日などに使う。

サンディングシーラー塗料(ラッカー)

本液1:シンナー1 で混合・使用する

トップコート塗料/クリアコート塗料(ラッカー)

本液1:シンナー1 で混合・使用する

ツヤ消し(サテン/マット)トップコート塗料(ラッカー)

本液1:シンナー1 で混合・使用する

3、5、7、10分消とあるが、仕上がりの「ツヤ消し具合」が違う。10分消はかなりマット(ツヤが無い)な仕上がり。

上のクリヤーラッカー(混合済)を混ぜて使えば、ツヤ消し具合を自分で微調整もできる。

薬局、ドラッグストアで売られている無水エタノール

「消毒用エタノール」は精製水が20〜25%ほどの割合で混入されているが、これはエタノール99.5%

染料の調合時、はじめにこの無水エタノール少量に対して染料を必要量 何滴か混ぜ、ラッカーのトップコート塗料を混ぜて(足して)吹くためのもの。

お馴染みステュMacで販売されているステイン(染料)
*ラッカー系塗料にしか使えません  *何色もある

「無水エタノール」に混ぜる

例:無水エタノール10mlに対してこのステインを4〜5滴入れて撹拌する。そこへ50mlのトップコート塗料(クリアコート1:シンナー1で混合したもの)を足す。

トップコート塗料に直接混ぜてもいいのだが、場合によって混ざりにくい。また、着色の際は粘度が低いほうが綺麗に塗れるので、この無水エタノールが希釈剤がわりになりちょうど良い。
なぜ無水エタノールだったかは・・・・忘れた。今までイロイロな書籍を見て参考にしてきた結果、どこかに書いてあったのだろう。。。確か英書で観たんだっけかな。。。。

ステイン(染料)*何色もある

ポリに使う事が多いがラッカーにも使える

ポリ系の顔料塗料(つぶし色)

A液4:B液1 の合計量に対して50%〜60%のシンナーで使用

例:A液40ml:B液10ml シンナー25ml〜30ml

ラッカー系の顔料塗料(つぶし色)

適正な粘度になるようシンナーで希釈して使用


とまあ、こんな感じで様々な塗料があります。ポリ系はAとBを混合すると「硬化」が開始します。時間が経つにつれて化学反応をおこして硬化するので4〜5時間以内に必ず作業を終えること。紹介したポリ系塗料の「B液」とは硬化剤です。主剤はA液です。
ラッカー系はある程度の量をあらかじめ混合して(クリヤーラッカー1:1シンナーで)保管しています。揮発しなければこの状態で保管できるのですぐに使えます。

因みに私は塗料の科学的成分までは詳しく知りません。あまり気にした事もありません。昔からコレを使って教わり、同業者などでもコレを使っている所が多いので、今でも信頼してこの塗料メーカーのものを使っているにすぎません。ですので、ホームセンターなどで売られている塗料で適しているものはなんですか?とか聞かれても分かりません(使った事が無い)。

 


 

DIY好きな方でしたら「自分で塗装をしてみたい」って思う人も多いのでは? もし実際に作業してみようと思うなら、必ず「どうなってもいい楽器」で試してください。間違っても、思い入れのある大切な1本で初チャレンジする事のないように。

現実的に、一般の方がバフィングマシーンなど所有している事はまず無いので、プロのクオリティで仕上げる事は99%不可能でしょう。また、必ずスプレーガンで塗料を吹き付けます。刷毛塗りなどは問題外です。ただし、刷毛の痕が残るような古い古い手作り感あふれた質感のようなものを目指すのでしたら(外壁の柵などペンキ風みたいな)刷毛もありかと思います。
フラメンコギターやクラシックギターなど伝統的な製作手法では「タンポ塗り」といって、テルテル坊主のような布を丸めたものを使い、セラックを何十回となく塗り込んでいく塗装方法もあります。

 

因みに、スプレーガンで質の高い塗装をするにはそれなりの設備が必要です。
空気の流れは「コンプレッサー(圧縮空気を作る) → 予備タンク(圧縮空気を貯める) → ドライヤー(圧縮空気の水分を乾燥させる) → 圧力調整 → スプレーガン」です。

コンプレッサー本体に圧縮空気を貯めておくタンクはあるので、必ずしも予備タンクはいりません。 ただし本体内部のタンク容量次第では、作業している間ずっとコンプレッサーが稼働しっぱなし、なんて事にもなります。ピストン式コンプレッサーは稼働音がうるさいので、ロータリー式です(高額だけど)。たしか歯医者さんとかでも使うとか。

  

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ピストン式コンプレッサー(タイヤの空気入れ、エア工具、建築の現場でよく使うタイプ)に直でスプレーガンを繋いで塗装している場面もよく見かけますが(私も初期はそうでした・・・)空気は圧縮すると水分も凝縮されます。つまりそのまま吹き付けると湿気を多く含んでいる空気で塗装する事となり、曇りや仕上がりの質感にも影響します。

ネット検索してみたら圧縮空気の水分について分かりやすい記事があったのでリンクを張っておきます
https://www.atlascopco.com/ja-jp/compressors/wiki/compressed-air-articles/drying-compressed-air

 

最後に・・・・
バフィング工程までは何度かチャレンジし頑張ればたどり着けるかもしれませんが、バフィングが問題ですよね・・・・手バフでツヤ出しなんてほぼ不可能です。
でもバフィングしないで完成さす方法もあります。水研ぎで#1000を使用して表面を滑らかに凹凸を無くしたら(バフィングをする直前の状態)、トップコート(ラッカー系/シンナー混合済)1に対して、さらにシンナーを1足します(1:1の割合)。粘度はサラサラで水のようになりますが、この状態で1〜2回吹くと、いわゆる「吹きっぱなし」と呼ばれる仕上げ・完成となります。サテンフィニッシュ(ツヤ消し)の場合はこの方法で仕上げます。
ただし、吹き付ける量(スプレーガンの調整)と、吹き付け技術が高くないと(慣れてないと)、粘度が低いのですぐ塗料が垂れてしまい失敗する可能性が高い。

近年、GibsonやFenderなどの安価なモデルはこの「吹きっぱなし(バフィングをしないで完成とする方法)」で仕上げているものが数多くあります。Gibsonだと「Faded(フェイデッド)」でしたか。あのFadedは(おそらくですが)木地の段階で(もしくはシーラー吹きの次に)顔料を吹き、数回サンディングシーラーを吹いて、軽く表面を整えたあと、サテン/クリアのトップコート塗料を吹いて完成としているのでしょう。ようは塗装工程の簡略化でそのぶん価格を下げている。