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前ページでフレットを抜き、溝を埋めました。
さてお次は完全にフレット溝を埋めた指板面に対してどのように「正確」に溝を切っていくか、という課題です。
2~3本ていどの溝切りであれば定規やノギスなどを使い指板面に位置を罫書き、溝を切ればいいのですが、今回は全フレット・さらにスケールが非常に短い(ギターなどと比べ)という事です。コンマ0.2~0.3ミリ以内の精度で切っていかなくてはなりません。通常のギタースケールであっても許されるのはせいぜい0.5ミリです。現在では機械により寸分の狂いなくフレット溝は切られるのでまずこのような位置ズレはおきません。
フレットの溝を切るには専用の治具があります。下の写真はLMI製のフレット溝切り治具ですが、ステュMacからも同様のものが売られています。治具の他に各スケール用の透明アクリルのテンプレートがあり、それらを使い指板材に溝を切っていきます。
*製作段階で「指板材」がネック材に接着されていない状態でなければ使用できません。
さて、テンプレートはあるもののカバキーニョ君の指板はすでに接着されていて外すことなど不可能。。。かといって、手書きでフレット位置を罫書いて切っていくには精度が出せない・・・。しばらく考えました・・・・
そして以下の方法を使う事に決定。
↑まず厚さ約5mmほどの「仮ローズ指板材」を用意して4mmほどの深さで溝切り。そしてできあがったのが下。
←これで寸分の狂いなく正確に溝が切れている"仮"指板材が完成。
スケールについて詳しく触れていませんでしたのでここで。
カバキーニョのスケールは約331mmでした。そこで数あるテンプレートからピッタリ合うものがないか探していったところGibson用テンプレート(24.62"/625.348mm)の11~31Fの部分を使えばピッタリ合う事が判明。スケールを計算すると331.266mmでした。11Fがカバキーニョのゼロフレット位置にあたります。
ここまで来ればお分かりでしょうか。次は"仮"指板材をカバキーニョの指板材の上に仮接着します。ここで使用したのは瞬間接着剤です。あくまで「仮」なのでごく少量で接着してあります。
画鋲は接着する時に位置がずれないようにするため。事前に正確な位置で固定し、画鋲等を使い固定。
仮接着が済んだら下の図のようにフレット溝切りノコを使い「仮指板材」をテンプレートがわりにカバキーニョ本体の指板材に溝を切っていきます。
溝を切ったあとはヘラなどを使ってパリッと剥がしていきます。
*カバキーニョ本体の指板材が「エボニー」でしたので、剥がす時に欠けるような心配はほとんどありませんが、これがローズだったり、もしくはささくれやすい材だったりした場合には注意が必要です。そういった場合には使用する接着剤を変えたり(例えばでんぷん糊など)もしくは剥がす時に熱を加えて無理がないように剥がします。
写真を観ていただくとローズ指板材のほうがエボニー材に残っているのが分かります。接着力に負けてローズ材は破損しているという事です。
すべて溝切りを終え大きくずれている部分を撮りました。右の画像は冒頭であげた7~8フレットです。
修理も終盤に近づき、いつもどおりフレットを打ちます。ゼロフレットはまだ打ちません(溝もまだ切ってません)。
ゼロフレット以外のフレットを打ち終わったところで重要な確認があります。仮弦を付けてチューニングメーターを使いオクターブ&各ポジションにおいての音程チェックです。ゼロフレットは「フレットの脚(タング)」を切り取った「仮のゼロフレット」をセットして弦張りします。
チェックの段階でほぼ完全に音程は合う事が確認できました。ただし、このまま規定の位置にゼロフレットを打つとどうしてもローポジションでの音程がシャープぎみになります。
世の中にはバズフェイトンシステムなど音程のズレを補正するために意図的にゼロフレット(ナット位置)位置を変えてセッティングする方法などがあります。私自身もナット~1フレットまでの寸法は、計算上で出した数値より短くするほうが特にローポジションでの音程がシャープしない、合うという事を経験的に学びました。
この事からタング(脚)を取り除いた「仮のゼロフレット」をマウント、動かし、メーターでピッタリ合う位置を探し出してゼロフレット位置を決定します。
*この理論を詳しく説明しているところがあります。「手作り楽器工房ミネハラ」http://www.minehara.com というところです。
私も以前からこちらのページに記載してあるMTSというチューニングシステムを参考にさせていただいています。直接コンタクトをとった事はありませんが、この場をかりてMTSという理論、システムに賛同いたします。
経験上わずかにずらせば「良い結果になる」という事は分かっていましたが、弦の太さや弦高までを考慮し、それをふまえたうえで計算をおこない補正し、ピッタリ音程が合う位置を割りだす、という方法を提案・実行しているのはすごいです。
さて、私は√など出てこようものなら???で、理論にもとづき計算式をもちいてナット位置を割りだすなんて事はできません。
各弦ごとにゼロフレット位置を変える事はしないので、チューニングメーター相手にチェックして、各弦でつじつまが合うところで位置決定すればかなり正確に音程は合います。
そして位置を決定したら溝切り、ゼロフレット打ちです。写真のとおり約1~1.5mmほど1フレット寄りにする事でローポジションでの音程がピッタリ合いました。
新しく作ったサドルの頂点も傾斜をつけて最終微調整としてオクターブが合うように製作してあります。
最後のチェックでは全てのポジションにおいて満足のいくレベルで音程が合い、まだ若干ずれているポジションでも数値的に最大2~3cent内での狂いに収まりました。
完成です。
09.8/8、この日は横浜の「HEY JOE」でanmi2のライヴがありました。修理する前は安藤さんいわくリハの時に「そのカバキーニョ、なんか音程狂ってない?」とつっこみをいれられる事が多かったようですが、それも改善。
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この日はゲストに河野啓三さんを迎えて「anmi2 meets K.K」というかたちで演奏。この日初めてお会いしましたがうっとりするようなピアノ演奏でした。お酒もはいり気分は上々、明日からはお盆休みという事もあり久々にゆったりとした時間を過ごさせてもらいました。
最後にパチッと1枚!
サイコーの夜をありがとうございました!
ファンの方が持参したCDにサインしているみくりやさん。ごめんなさ~い、後ろ姿しか写ってませんでしたm(_ _)m。
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