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ようやく最後のページです。

擦り合わせ作業をしていきます。指板修正で完璧にしましたが、ごくごくわずかですが、各フレットの頭は不揃いです。とはいえ、擦り合わせしなくても普通に問題なく弾けるほどのレベルです。

その前に「なぜ?」指板修正であんなにも執拗なまでに精度を出さなければいけないのか?下図は家を例えにしてみました。あなたならどちらの家に住みたいですか?

え?上のほうが芸術性があって面白いじゃないかって?・・・・そ、そうですね。

 


 

と、まあ、指板修正段階で精度が悪ければ悪いほど、擦り合わせ時にフレットを削る量がかなり多くなるという事です。たま〜〜に見かけますが、フレット交換したばっかりです、と持ちこんできたギターなのに「え?これかなり摩耗してませんか?」というケースもある・・・・。

先へ進みます

←ストレート定規、#1000のペーパー、木製ブロック

  

このパドゥーク材↑↑のブロックもかれこれ20年物。私がESPに通ってた時に作ったものです。↑↑毎回必ずこのように定規を当てて平面が出ているかチェックします。そういえば10年くらい前までは微妙に変化がありましたが、最近はほぼ完全に安定(平面が狂わない)しています。

 

指板修正の時と同じように、ネック下に支えを置き・・・・

トラスロッド調整でネックを真っ直ぐに調整します。

 

矢印の方向に擦っていきます。

  

最小限の力でかるく、「フレットの頭を揃えているんだ」というイメージを思い浮かべながら作業します。やみくもにガシガシと擦ってはだめです。

私がよく「イメージしながら」って言いますが、コレ非常に大切です。たとえ話ですが、運転がうまい人、プロのドライバーって初めて乗る車でもシートに座って数分で車全体が自分の身体の一部のように感じ取る事ができるって言いますよね。その車の大きさがすぐ掴めるというか・・・。ようはイメージです。ハンドルを握った手、シートに触れる腰回りやお尻の感覚が延長していって分かるような。

たぶん職人さん・技術屋さん全般に言える事なんでしょうが、自分の手や動作をとおして「いまどの位削ったのか」という事が分かるようにならないといけません。

 


指板修正で完璧に仕上げていれば(完璧に仕上げてないとダメですが)軽く擦っただけですぐに頭は揃います。ストレート定規を当てて、隙間がないかどうか入念にチェックします。慣れないうちは、部屋を暗くして後ろからライトを当ててやると、隙間があればそこから光が漏れるので分かりやすくなります。

もちろん、指板修正のところで説明したとおりネックは完全に「直線」ではありません。ハイポジ側はすこし傾斜しているので、そのあたりの状態を考慮しながらチェックします。

 

ネックと平行に擦るという事は、極端に描くと↓↓フレットは下図のような状態になっています。

ですので、今度はフレットと平行に軽く擦る事で滑らかにします。

頭が揃ったら最後にこの方向へ擦ります。*画像撮り忘れ・・・

 

 


 

さて現段階でフレットはどのような形をしているかというと下図(中央)のような状態です。

 

そこでスポンジパッドを使って鋭角な状態のフレット角をすこし丸く落としてやります。#1200のペーパーです。

 

矢印の方向にバラバラと動かします。↓あまり局所的に動かすと、そこだけ削れて低くなってしまうので、全体を均一に。

バラバラ、が終わったら今度は1本ずつこの方向で研磨→

 

他にも注意点があるのでそこは動画をよく観ていただくとして・・・・

次は・・・・

スチールウールで磨きます
ここまでやるとかなりピカピカ光沢が出てきますが、最後に金属磨き・コンパウンドを使って磨き上げます。

 

使うコンパウンドは人によって様々ですが、私のお気に入りはフェルナンデスの「946」

  

よくタップリと付けている人を見かけますが、ほんのちょびっと付ければ十分です↑
使用する布は塗装の部分ツヤだしとかにも使う、かなり滑らかなやつ↓

  

バッカスだ。これももう何年ものだろう・・・・ずいぶん長いことつかっているな。。。。

 

さてさて、いよいよ完成でございます。

マスキングテープを丁寧に剥がしていって指板オイル等でシットリと。

  

 

完成!

動画をどうぞ

 


 

余談・・・

ZEMAITISのギター

数年前に見かけてその時に初めて知ったんですが、通常、指板バインディングが施してあるギターやベースはほぼ99.9%確実にフレット脚はバインディングの側面に露出していません。下図のようになっているはずです。

 

ところが、どっこい。

これを見た時は「え!??なんで??」と驚愕しました。
最初はてっきり、以前に誰かがフレット交換したギターだと思いました。でもよくよく調べると一度もフレット交換などしていない事が判明。

そう、ゼマイティスの「仕様」なんです。これが↑
ウェブで検索したり、正規サイトを観てみましたが、たしかにどのモデルもこのような仕様になっていました。
19才の頃からずっとこの業界の私、なぜ今まで知らなかったんだろう、と不思議に思った。

でもこれだけは言えます。今まで何百というフレット交換をしてきましたが、指板バインディングがあるもので、このような仕上げ(ゼマイティスのような)になっているものは皆無でした。言い換えればゼマイティスのフレット交換は受けた事が無かった?(笑)

まあ、とにもかくにもコレ↑が正しい仕様という事なので、そういうギターも世の中にはあるという事でした。

*昔からこの仕様だったのかまでは調べていません。

 


 

 

さあ、最後の作業です。

取り外したピックアップの取付です。本来はフロントP.Uだけ外せば作業可能ですが、今回はフロント&リヤのP.U交換依頼もあったので、新しいP.Uを取り付けます。

  

 

フレット交換をすると、ほぼ9割方、オリジナルのナットは再利用できません。が、いちおう↓↓小綺麗にして当てがってみます。

  

←もとのナットをセットしてみたところ。

 

こんなふうに、新品カッター刃でナット溝から2フレットにわたり橋かけてチェックすると、ナット溝が1フレットより高いかどうか分かります。なぜカッターの刃かというと、普通の定規とかではせいぜい5&6弦くらいしか弦溝にはまらないから。

 

←結果は・・・ダメでした。溝が低すぎるので再利用不可です。

という事でナットも作り直し↓

 


 

弦を張り、弦高、オクターブ、ネック調整などひととおりのセッティングをして、本当に完成!

 

当初の目的でもあるフレットの有効面積確保もこのように↓

  

もとの状態と比べてみると一目瞭然ですね。

 

いや〜ボリューミーでした。5ページ目いくとは思わなかったですな。2000〜2002年に紹介したフレット交換記事と比べてどうでしょうかね。作業の流れ自体はほぼ同じだと思います。

「百聞は一見にしかず」ということわざがあるとおり、今回のポイントは動画! 7分半ほどの動画もありますが、飛ばさずじっくりご覧いただければなにかヒントが見つかるかもしれませんよ!

それではおつかれさまでした。

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