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このギターの経緯

このGibson JohnnySmithモデルは2015年12月に当方でフレット交換(アイロン修正も)を行っています。

  

どんなギターでもそうですが、まず状態を確認する事が大切です。このギターの場合、トラスロッドを限界まで回した状態で真っ直ぐを保つ状態でしたので、フレット交換する前にアイロンをかけ、限界までロッドを回さなくともネックが真っ直ぐを保つようにしました。

 

アイロンの場合は元に戻る可能性もあるので、アイロンをかけたあと弦を張りチューニングし1週間ほど様子をみます。その間にネックに変化がなく安定しているようなら次の作業へ進みます。特に問題はなかったのでフレット交換しました。

  

 

完成しギター引き渡し後、約2ヶ月後にお客様からご連絡をいただき「様子がおかしいので今一度ギターを見てほしい」と。再びネックの状態をチェックしてみると順反り方向に反っている事が判明。 トラスロッドには(アイロンにより)余裕ができていたので、ロッドを少ししめてネックを真っ直ぐにしてしばらく様子をみる事に・・・

  

 

ところが、ネックを真っ直ぐに調整して、1〜2日後にチェックしてみると弦高が約0.1mmほど上がり、ネックも極々わずかに変化している。

この段階ですこし嫌な予感がしたのだが、2〜3日放置していてもそれ以上ネックは変化せず安定している。しばらくお預かりさせてもらい、はっきりした事が、どうやらロッド調整ナット部の「木材部分」が圧縮・崩れ・潰され、て、ナットがどんどん奥へ食い込んでいっているようだった。

  

画像ではすでに六角ナットを1個かましてある(ネジ山はドリルで無くしてあるので単なるワッシャの代わり)↑↑ 

 

ロッド調整側(の木材が)が潰れて奥へ食い込む場合もあれば、ロッドエンド側が潰れて食い込む場合もある。通常のトラスロッド(順反りにしか対応しない1本タイプ)の構造をご存じであれば、どちらか一方の木材が潰れて食い込むという事は、ロッドの"効き具合が弱く"なると理解できると思います。(つまりロッドを少し緩めたのと同じ)

ちょうどいい画像を以前にアップしていたので引っ張ってきた↑↑ Aがギブソンやフェンダーなどに採用されているごく一般的なロッドの仕込み方。このJSモデルはロッドを取り外してみて分かったのだがほぼ湾曲していない。

 

 

  

ギターはいったんお客様のもとへ返却し、その後もトラスロッドを(ご自身で)調整しつつ騙しだまし使っていく事に。運が良ければある程度締めた段階で木材が潰れきって、それ以上食い込まなくなるケースもある。

約半年のあいだメールで様々なやりとりをさせていただき、最終的に決定した事が今回の修理内容である「指板交換(指板製作)、ロッド交換、カーボン補強材仕込み」という大修理でした。

1年前に十分にチェックしたうえでフレット交換を行ったが、まさかこんな予期せぬ不具合が起こるとは夢にも思わず、私自身も非常に複雑な気持ちでした。こうなる事は予測不可能だったとはいえ、現実にこのようになってしまったので致し方ないといえば致し方ない・・・・申し訳ないという気持ちも。

 


 

 

 

とまあ、こういった経緯があるギターですが、お客様も意を決しての大修理、持てる力を全て注ぎ込んで・・・・と言ったら大げさだが、修理を進めていきたいと思います。

  

まずはコレ↑トラスロッドカバーですが、すでに弦に当たりそうでギリ。P.Uも↑↑かなりギリで最終フレットを押さえるとカバーに接触しそうな勢いです。

 

  
トラスロッドを完全に緩めてしまうと、このようにかなり順反りします。。。。↑↑
これが意味するのは、アイロンである程度余裕を持たせたものの、1年経たずしてほとんど元のクセ・状態にまで戻ってしまったという事です。

 

さらに指板が浮き上がってます。これはお客様がご自身で少しずつ少しずつロッドを調整(締めて)しながら使用してきた間に現れた現象で、調整部分の木材が潰れて、行き場がなくなった木材がついには指板とネックの接着剤を剥がし、結果としてナット〜1F付近までの指板を盛り上げています。

  

 

ナットを取り外し定規を当ててみると盛り上がりがよく分かります。↓↓

  

 

さて、今回の修理内容は指板交換もありますが、なぜ?指板を交換する必要があったのか。それはオリジナルの指板がすでにかなり薄い状態だったからです。オリジナルの指板厚はナット側/約4.8mm、エンド側/約4.5mmでした。*指板中央

←因みに新しい指板は約6.3mm。最終的に6.0mm位になるでしょう。

フレット交換における指板修正作業では必ずコンマ何ミリかは指板が薄くなります。おそらくこのギターが製造・販売されてから数回にわたりリフレットされてきたでしょう、それによって指板が徐々に薄くなりこうなったと考えられます。
*製造・販売段階で元々薄めであった可能性もあります。

 

ストックしているエボニー指板材でできるだけ黒い材をチョイス。

 

新しい指板を製作しますが、その前にこのギターのスケールを確認します。Gibsonスケールは(多くが)628mmというのはご存じですね。ところがどっこい、ナット〜12Fまでの距離を測ってみると314mm(628の半分)ではない。

  

では実際に何ミリスケールか?というと・・・・・約"632"mmスケールでした。↑↑いつもお世話になっているこのTSULTRA FRETというのは(今ではネットに数多くある)「ナット〜各フレットまでの距離」を自動的に算出してくれるプログラム、が設置してあるサイトです。

 

 

余談ですが、このサイト(CRANE http://www.crane.gr.jp)は私がまだ20代半ば、見よう見まねで自分のホームページを試行錯誤で作っていた時に非常によく参考にさせていただいたサイトで、お会いした事はありませんが個人的に尊敬しています。サイトの文面を引用させていただきますが「18世紀~20世紀初頭のギターの修理・復元/修復 ・調査・レプリカ製作・図面配布、ならびに情報公開。」という事で、非常に濃い内容で、当時の私にとってバイブルでした。

久々にホームページを拝見したところ1995年に開設したとの事で、開設からちょうど3〜4年の時に(私が)夜な夜な参考に見まくっていたようです・・・・当方の修理記事・ページ構成が似てるのもそのせい(笑)

 

 

話しを戻します
このギターが約632mmスケールだと判断したのは、このフレット計算プログラムにいくつかの数値(630〜634mmなど)を打ち込み、出力された値を一つずつチェックし、一番合うものが632mmでした。
スケールを判断するのに注意しなければいけないのは、ナット〜12F間の寸法だけを鵜呑みにしてはいけません。なぜなら、たまにナット〜1F間だけ短いものもあったりするからです(バズ・フェイトンなど)。

このギターのスケールを特定するのには苦労しました。コレ↑↑をご覧いただければお分かりのとおり、〇印は(実際の指板/ポジションと)ピッタリ数値が合っている箇所、△印は微妙に違う箇所、×印は全く合っていない箇所です。前述のとおりいくつかの数値で出力した表をもとに一つずつチェックし、〇印がいちばん多い、というかいちばん合うスケールを探して「約632mm」と判断しました。
*ナットからの距離だけではなく各フレット−各フレット(引き算)で算出した数値をもとにフレット〜フレット間もいくつか確認します

いま気になってちょっと調べてみたらJohnnySmithモデルは25"スケールだそうです。つまり635mmですね。

 

ポジションマークはこんな感じです↓↓ すでにかなり薄く、指板材の"黒色"が透けている(暗くなっている)ところもあります。

  

このように↑なっているのは前回の修理、指板修正でこうなりました。勿論事前にこうなる可能性がありますよ、とお伝えしたうえで作業しています。

次のページから実際の作業開始です。

 


 

最近観た映画

GODS OF EGYPT(邦題:キング・オブ・エジプト)


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前評判をチラッと聞いていたが、その噂どおりの映画だった。

まずキャスティング・・・・古代エジプトが舞台なのに白人多すぎ。
CGてんこ盛りの映像だが、近年のCGレベルからするとお粗末もいいとこ。

ジェフリー・ラッシュ、ジェラルド・バトラーが出演しているので多少期待して観たが、ある意味全く別の方向で感動&爆笑した。
荒唐無稽すぎて「ここまでやってくれると逆にいいよ!この映画!」と観てるうちに何かが吹っ切れ、いや〜このアクションファンタジー映画いいね!になった。

 

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